個人的に興味をそそられたので。法学部的思考から考えてみたい。
http://rionaoki.net/2009/12/2317
基本的にはこのブログの筆者の言うことに同意である。日本では借り手の保護が歴史的に手厚く、それが逆に賃貸住宅の供給を細らせる、あるいは供給がある特定の形態(賃借人が早く回転する一人暮らしのワンルームマンションなど)に偏る結果になっているのだ。
なぜそのような結果になるのか、詳しく見てみよう。そのためには借地借家法を見る必要がある。
例えば、借地借家法の26~28条。
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、
従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、
建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
第二十七条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
2 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、
正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
簡単に言うと、賃借期間が終了や、解約の申し入れをしたとしても正当な事由(”悪質”な賃料の滞納、立退料の支払い、賃貸人が使用する事由の存在など)がなければ契約を終了させることができず、さらには賃借人が居座ることで契約が自動的に更新されてしまうことさえあるのだ。
このような条文は、賃借人の地位が賃貸人に比べて低く、保護する必要があると考えられるためだ。
この点について上記のブログの青木氏は
追い出し行為が生じるのはそれで利益があがるからであり、それで利益があがるのは家賃を払わない借り主が居座るからだ。そして、借り主が家賃を支払わずに居座れるのは借り主の過剰保護のためである。
借り主が家賃を滞納しても追い出せないなら、家主が賃貸を渋るのは当然だ。まず賃貸住宅の供給が細る。日本に家族向けのそれなりの広さの賃貸住宅があまりないのはこのせいだ。そのために住宅ローンを組めないひとや短期の在住者は望む物件を見つけることができない。
と指摘する。しかし、滞納しても追い出されないかというとそうでもない。まず、滞納などが生じた場合、それは民法上の債務不履行にあたり、貸主は契約を解除することができる。厄介なのは、その規定をそのまま適用できるのではなく、借地借家契約では修正が加えられているという点。借地借家では、債務不履行+信頼関係破壊が必要なのだとされている。信頼関係の破壊とは、要するに賃借人に悪質な行動(規定に従わない利用、賃料の不払いが2月以上にわたってあったことなど)があったと考えてもらえればよいと思う。
この規定自体はおおむね妥当だと考える。1月不払いがあったから出て行ってね、というのではあまりにも酷だろう。要は、悪質な行為があった場合、すぐに出て行ってもらう、ということを徹底させればよいのだ。おとなしく出て行ってもらえればよいのだが、ごねられるとそれこそ泥沼だ。出て行ってもらうためにはきちんとした法的手続きにのっとらなければならず、現状の日本の裁判ではそれはなかなか時間と費用がかかるものである・・・。そこが賃料の不払いを過度に恐れる賃貸人の態度、そして「追い出し屋」につながっていくのだと思う。
つまり、ごねて居座れば居座るほど得をしてしまう制度になってしまっているのだ。裁判や弁護士に頼むのはちょっと・・・と考えて仕方なく放置している貸主は思っている以上に多いのではないだろうか。
その問題を解決するには、法律によって規制を緩和するのではなく、速やかに法的手続きにのっとった追い出し手段を確保するのがよいのではないだろうか。もちろんブログの筆者の更なる保護に解決の糸口を求めるのは間違いだという点には同意するところではある。
そもそも、借地借家法は平成4年に借地法、借家法を改正してできたものだ。改正されたのは、借主が過剰に保護されすぎているという批判を受けたためである。しかし、実際それほど変化があったわけではないと個人的には思ってしまう。詳しくは借地借家法と借地法、借家法の条文を比べて確かめていただきたい。
いくらなんでも、居座れば契約が勝手に更新されるという借地借家法26~28条の規定等は過保護であろう。そのような規定が供給を細らせ、結果として賃借人が不利益を被る結果となる。誰かが上記ブログのコメントで指摘していたが、事後の正義を優先しすぎた結果、見えにくい不利益が生じることになる典型的な事例である。このようなことは法律の世界ではよくあることである。利息制限法の改正、派遣業法の改正・・・うわべだけをみると綺麗なことが並べてあるが、それがすべて良い結果になるとは限らないのだ。
法学部も経済学の基礎くらいは必修にしてもよいのではないか、と思ってしまう近頃。政治というものも経済と切り離して考えることもできないわけであるし・・・。
追記:池田氏も同じようなことを述べていたのには驚いた。
http://agora-web.jp/archives/808584.html
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