年の終わりに

去年はサブプライム問題、リーマン破たんと激動の1年というべきものだったが、今年はどうだっただろうか。日本経済に限って言えば、政権交代という大きな転換があったのだが、その成果はまだ見えそうもない。市場の回復も他国と比べて思うようにはいかず、停滞と不安の1年だったのではないだろうか。

資本主義への大衆の信頼がゆらぎ、市場への根拠なき批判が多く聞かれたように思う。しかし、今のところ資本主義に代わる制度はなく、自由を守るためにはその制度に依拠するしかないのだ。そうでなければ世界から取り残され、成長ないまま日本はより衰退していくことになることは自明だ。

来年は中国がGDPで日本を抜き去り、大きな意識転換が両国で起きるだろう。子どもの数が少なく、その流れがもはや確定的になってしまった日本が衰退していくことは、もはや避けられない。問題はそれをどうやって緩やかにするか、ということだ。現状を正しく認識しなければならないが、それをわからず、過去の栄光にすがる人々は認識が甘い。若者はその点でいうと、直感でそれを理解し始めている人々が多く、悲観的になっているのではないだろうか。もちろん将来に対する希望を持つことは必要だが、きちんとした現状認識を行うこともまた大切だ。

名目GDP3%成長率を達成するという希望自体は素晴らしいものだ。しかし、それは果たして市場や企業という成長へのエンジンを無視した政策で可能なのだろうか。来年はもっと具体的な戦略、そして市場に対する適切な見方をとれるよう期待したいところだ。

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借主の過剰保護とその問題点はどこにあるのか

個人的に興味をそそられたので。法学部的思考から考えてみたい。

http://rionaoki.net/2009/12/2317

基本的にはこのブログの筆者の言うことに同意である。日本では借り手の保護が歴史的に手厚く、それが逆に賃貸住宅の供給を細らせる、あるいは供給がある特定の形態(賃借人が早く回転する一人暮らしのワンルームマンションなど)に偏る結果になっているのだ。

なぜそのような結果になるのか、詳しく見てみよう。そのためには借地借家法を見る必要がある。

例えば、借地借家法の26~28条。

第二十六条  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

第二十七条  建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。

第二十八条  建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

簡単に言うと、賃借期間が終了や、解約の申し入れをしたとしても正当な事由(”悪質”な賃料の滞納、立退料の支払い、賃貸人が使用する事由の存在など)がなければ契約を終了させることができず、さらには賃借人が居座ることで契約が自動的に更新されてしまうことさえあるのだ。

このような条文は、賃借人の地位が賃貸人に比べて低く、保護する必要があると考えられるためだ。

この点について上記のブログの青木氏は

追い出し行為が生じるのはそれで利益があがるからであり、それで利益があがるのは家賃を払わない借り主が居座るからだ。そして、借り主が家賃を支払わずに居座れるのは借り主の過剰保護のためである。

借り主が家賃を滞納しても追い出せないなら、家主が賃貸を渋るのは当然だ。まず賃貸住宅の供給が細る。日本に家族向けのそれなりの広さの賃貸住宅があまりないのはこのせいだ。そのために住宅ローンを組めないひとや短期の在住者は望む物件を見つけることができない。

と指摘する。しかし、滞納しても追い出されないかというとそうでもない。まず、滞納などが生じた場合、それは民法上の債務不履行にあたり、貸主は契約を解除することができる。厄介なのは、その規定をそのまま適用できるのではなく、借地借家契約では修正が加えられているという点。借地借家では、債務不履行+信頼関係破壊が必要なのだとされている。信頼関係の破壊とは、要するに賃借人に悪質な行動(規定に従わない利用、賃料の不払いが2月以上にわたってあったことなど)があったと考えてもらえればよいと思う。

この規定自体はおおむね妥当だと考える。1月不払いがあったから出て行ってね、というのではあまりにも酷だろう。要は、悪質な行為があった場合、すぐに出て行ってもらう、ということを徹底させればよいのだ。おとなしく出て行ってもらえればよいのだが、ごねられるとそれこそ泥沼だ。出て行ってもらうためにはきちんとした法的手続きにのっとらなければならず、現状の日本の裁判ではそれはなかなか時間と費用がかかるものである・・・。そこが賃料の不払いを過度に恐れる賃貸人の態度、そして「追い出し屋」につながっていくのだと思う。

つまり、ごねて居座れば居座るほど得をしてしまう制度になってしまっているのだ。裁判や弁護士に頼むのはちょっと・・・と考えて仕方なく放置している貸主は思っている以上に多いのではないだろうか。

その問題を解決するには、法律によって規制を緩和するのではなく、速やかに法的手続きにのっとった追い出し手段を確保するのがよいのではないだろうか。もちろんブログの筆者の更なる保護に解決の糸口を求めるのは間違いだという点には同意するところではある。

そもそも、借地借家法は平成4年に借地法、借家法を改正してできたものだ。改正されたのは、借主が過剰に保護されすぎているという批判を受けたためである。しかし、実際それほど変化があったわけではないと個人的には思ってしまう。詳しくは借地借家法と借地法、借家法の条文を比べて確かめていただきたい。

いくらなんでも、居座れば契約が勝手に更新されるという借地借家法26~28条の規定等は過保護であろう。そのような規定が供給を細らせ、結果として賃借人が不利益を被る結果となる。誰かが上記ブログのコメントで指摘していたが、事後の正義を優先しすぎた結果、見えにくい不利益が生じることになる典型的な事例である。このようなことは法律の世界ではよくあることである。利息制限法の改正、派遣業法の改正・・・うわべだけをみると綺麗なことが並べてあるが、それがすべて良い結果になるとは限らないのだ。

法学部も経済学の基礎くらいは必修にしてもよいのではないか、と思ってしまう近頃。政治というものも経済と切り離して考えることもできないわけであるし・・・。

追記:池田氏も同じようなことを述べていたのには驚いた。

http://agora-web.jp/archives/808584.html

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「特命回収」債権について知るにはこの本

特命回収 Book 特命回収

著者:倉澤 遼
販売元:宝島社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

近年改正された利息制限法。世の中ではおおむね好意的に受け入れられ、過払い訴訟が世の中で大量に起こされるようになった。今では弁護士や司法書士の広告が電車の中で一番目立っているのではないだろうか。

しかし、その裏では消費者金融や商工ローンなどノンバンク業界が非常に苦しい状況に追い込まれ、本当に借りたいと思っている人にお金が回らなくなっている。たしかに、多重債務に追い込まれた人々は助かった、しかし結果として中小企業に対する最後の貸し手がいなくなり、代わって街金融が跋扈する・・・それが今向かいつつある状況だ。

本書は商工ローンSFCGの元社員によって書かれたもので、小説の形をとっているが、ほとんどノンフィクションのように思えてくるほどリアルである。主人公は商工ローン最大手のスーパーファンド(SF社)で社長の懐刀として、問題案件を次々に処理していく。

債権回収の方法だけでなく、担保権設定、不動産取引、サービサーなど物語形式でわかりやすく説明されているので、法律論だけで良く理解できないという学生にもお勧めできるものだった。そういった知識面だけでなく、本書が問いかけるのは利息制限法改正による法定利率引き下げは本当に素晴らしい結果をもたらしたのか、ということだ。主人公や周囲の社員は、貸し渋りを行うようになった銀行に代わり事業者に対して資金を流す最後の貸し手としての誇りを持って働く。しかし、消費者保護をうたう弁護団の登場、利息制限法の改正、社員のモラルハザード・・・SF社は破滅へと向かっていく。

本書では、違法な取り立て等、ノンバンク業界の汚い部分がほとんど描かれておらず、それが主人公をダークヒーロー的に仕立てている。その点は差し引きして考えるべきなのかもしれない。実際に債務者となって悲惨な目にあった方々も実際に多く目にしてきたし、ノンバンク業界に問題がなかったとは言えない。

しかし、過払いバブルといわれる司法業界に対して違和感を感じる方々、あるいはノンバンクなんて世の中には必要ない、なんて考える方々にも読んでほしい一冊である。もちろん債権回収について知りたい方もぜひ。

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久しぶりに目の覚める展開

ここのところの世界の株式市場、為替マーケットはわりと落ち着いていたが、大きな動きが今週末にかけておこった。

ドバイショック直撃 円一時84円台、東京株9000円割れ迫る

ドバイ信用不安が円高の加速している最中に発表され、さらに円高を加速させることになった。世界的には大きなショックをもって受け入れられた。とくに欧州の金融機関の損失懸念から、欧州通貨が売られており、円の独歩高という展開に。以下ロイターより

「ドバイ・ワールドは2008年6月に、期間2年21億ドル、3年19億5000万ドル、5年10億ドルの計3本のターム・ローン、期間3年4億5000万ドルのリボルビング・クレジットの契約を締結した。これにリードマネジャーやアレンジャーなどの形で関わった金融機関には、三菱東京UFJ銀行<8306.T>、カリヨン<CAGR.PA>、HSBC<HSBA.L><0005.HK>、ING<ING.AS>、ロイズ・バンキング・グループ<LLOY.L>、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)<RBS.L>、三井住友銀行<8316.T>などがあり、さらにゴールドマン・サックス<GS.N>など50社が融資に参加しているという。」

たしかに、欧州勢の金融機関のダメージは大きそうである今朝の日経によると、邦銀のドバイ向け債権保有額は1000億円規模であるとのこと)。また、爆弾のひとつが破裂し、回復基調(日本を除く)であったのが再び下落基調へと陥ってしまった。しかし、これが最後の爆弾というのはありえないだろう。来年にかけて商業用不動産の問題が大きくなるであろうし、一般に可視化されていない問題がまだまだあるように思える・・・。

この問題はひとまずおいて、円高、そして政府について少しコメントを。明らかに80円前半というのは日本の円の強さを表しているものとしては違和感がある。つまり、欧州の通貨の影響を受ける円という流れで円高になったということは誰しもが感じることだろう。輸出企業頼みの日本経済では円高は好ましくない。では円高を止めることが今の政府で可能だろうか。

誰も思っていないから円高が加速しているのではないか、というのが僕の思いだ。藤井財務大臣はなんだか当初と打って変わって異常な円高には介入する可能性をにじませている。一方米国はどうかというと。(以下某ファンドマネージャーのレポートをもとに作成)

サマーズ国家経済会議(NEC)委員長の発言「ドル安を誘導し、米国の輸出力を回復することで、米国経済の中心を消費から生産に戻したい」ドル安政策については米国内で反対の意見も。「ドル安は米国への投資を減少させ、それは景気悪化と雇用減につながる」という意見である。米国の輸出回復より、投資減少のデメリットを心配する声も多い。

しかし、ドル安誘導の意見が強い。オバマ大統領は、11月21日のラジオ演説で、「米国はこれまでのような借金による消費で経済を回してはならず、アジア諸国への輸出で経済発展しなければならない」「米国のアジア輸出が5%増えるだけで米国の失業はかなり減る」「米国民は消費を控えて貯蓄を増やし、政府も財政赤字を減らさねばならない」と事実上のドル安歓迎発言をしている。バーナンキFRB議長も16日に「(金融危機時にドルなど)安全な資産へ集まっていた資金が、戻り始めた結果だ」と指摘し、ドル安を容認する発言。

国際貿易不均衡を是正するにはドル安が不可欠であり、ドルの急落や暴落(要するにドル安のスピードが問題)が起こらない限り、ドルの穏やかな下落は米国にとって歓迎すべき現象なのである。この副作用はインフレであるが、現在の米国でインフレは起こりそうにない。ドル安の進行で米国の製造業や多国籍企業は恩恵を受けており、ドル安のなかで米株価が堅調なのはその証である。
                                
どうにも日本が為替介入を呼び掛けてもあまり賛同は得られそうにない様相である。そして、日本だけの介入にはそれほど効果がないというのが市場のコンセンサス(70円代ならば効果はあるように僕は思うが)。
                                                 
そして、日本政府の発信能力・内容があまりにも欠けている。当初円高容認のような内需中心とした政策を発表。にもかかわらずその具体的な内容はまったく見えてこない。事業仕わけも良いが国内のパイを増やす戦略を考えてほしいものだ(子ども手当では先が見えている)。デフレ宣言しておきながらなにもしないというのはいかがなものか、本気で呆れそうになってしまった。 
                                                                          
そういう意味では、長期的には日本の通貨に対する信頼が落ち、下落していくであろうから円高はいずれ収まるだろう。しかし、それまで日本の輸出企業が生き残れるのだろうか。考えようによっては、このことが民主党目を覚まさせたといえるのかもしれない。民主党の真価、対応力をこれからよく見ておきたい。

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記者クラブオープン化と返済猶予制度について

既存メディアでは、まったくと言っていいほど報じられていない記者クラブのオープン化。

しかし、珍しくまともに報じている関西ローカルの番組があると神保哲生氏のブログから知った。このようなニュースは首都圏では報道できないだろう。youtubeにあったので。すぐに消えるかもしれないが。

http://www.youtube.com/watch?v=ZgBABz7UxjM

これは勇気がいることであっただろうし、角さんや石田氏を中心としたコメンテーターの意見は至極もっともなものであった。既存メディアの側にいる角さんが、「メディアに対する批判を行うメディア」の必要性を説いたことは尊敬に値する。この「ちちんぷいぷい」という情報番組は昔から自分自身なじみがあって、番組名からは想像出来ないくらい、政治や社会問題をわかりやすく伝える技術に関して素晴らしいものを持っている。今後の報道にも期待している。

話は変わって、オープン化という意味では亀井金融相の行動は素晴らしい。しかし、返済猶予制度はどうだろうか。当初に比べてかなり現実的な案にはなったが、この制度の申請自体が、中小企業の倒産への地獄の一丁目という意味と利害関係者にとらえられないか、という不安はある。あまり利用されないのではないだろうか。そうするとどうなるか、もはやどう考えても事業の継続は不可能だろうというゾンビ企業が生き残る。それは経済の正常な新陳代謝を阻害していることに他ならない。やはり、中小企業における資金調達の問題の根本はこの制度ではどうにもならないだろう。この制度に対する批判的な記事は新聞等で多く書かれているが、完全ではないが肯定的な意見もある。

http://ameblo.jp/bhycom/entry-10360750039.html

(以下引用)どのようなことにも、良いことと悪いことはあります。確かにこの法案は市場原理を歪めるといえばその側面は否めないし、国際化の中で逆行すると言われればその側面もあることは事実です。

でも、現在、日本の内需拡大はとても重要なことですし、自民党のおかしな政策で、地方や中小企業が衰退し雇用がやばくなり国民の財布が寒くなっているのは確かです。

さらには、ここ数年の銀行の、対中小企業に対する貸し渋りは制度融資以外ひどい状況で、この日経の記事も銀行が正常なお金の仲介機能を果たしている中でのことなら、この解説の記事も理解できますが、銀行自体まともな状況じゃないから、返済猶予制度を利用して銀行のお金の仲介機能を正常化する側面もこの法案の趣旨があることを忘れて欲しくないと感じますね。  

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「ブラック・スワン」読了

読みたいと前々から思っていた「ブラック・スワン」をようやく読了した。

結論から言うと、非常に難解だが素晴らしい作品であり、久しぶりに知的興奮、というか著者からの挑発を受ける本だった。

著者はデリバティブのトレーダーでありながら、ファイナンス理論、ベル型カーブを(市場において)役に立たないと切って捨て、まがい物の専門家(特に経済学者)をこき下ろす。簡単にいうと、人間が持ってしまった経験による予測を、あたかも普遍の真理のように”思いこみ”それを知らずに行動している者の愚かさを指摘。料理されるために、餌を与えられ太らされ、最後には丸焼きにされる七面鳥の例を引き合いにして、昨日起こらないことが今日起こらないとは限らないこと(黒い白鳥が現れる!)を示す。科学の発展によって、人はなんでも変化を予測できる、変化によって何が起こるかわかると思いこむようになった。しかし、世の中の事象は複雑で、未来が予測できる時点で、それはもはや何が起こるか分からない”未来”ではないのだ。一見当たり前のようだが、成長するうちに忘れてしまう(あるいは、自分をだます)ことをタレブは非常に論理明快に説明してくれる。

市場で起こったサブプライムはまさにブラックスワンであり、数理モデルの発達した金融工学でバブルは防げると思いこんでいた投資家を丸ごと飲み込んだ。市場の値動きはガウスのベル型カーブに従うと仮定するが、市場はそれで測れるものではない。市場には均衡から離れた極端な結果が生じる可能性があり、平均から離れた変数を生じうるものにはもはやガウス的な手法は使えないのだ。

タレブはそのうえで悲観的になっているわけではなく、「将来が完全に予測できるという考えさえ捨てて、自分のやっていることの限界をいつも意識していれば、できることはたくさんある。予測できないなら、予測できないことを利用すればよい」と言っている。筆者はその例として、産業におけるイノベーション、名もない作家の突然のベストセラーなどをあげる。自由な市場がうまくいってきたのだとすれば、それは試行錯誤を認める(数多くの参入者、そして退場者を認める)からだともいう。つまり、確率ではなく影響のほうに焦点をあてるべきなのだ。フラクタルなランダム性を使うと、白鳥のいくらかは現れる可能性があるのが見え、現れればどういうことになるか意識できる、とも書く。ちなみに次のタレブの著作のテーマは「イノベーション」。

タレブの思索をすべてここで書くことは到底不可能なので、詳細はブラックスワンを。

実際に市場で行動していた人々が本当に将来予測不能な値動きをする可能性というものをわかっていなかったのだろうか。投資家への説明責任として有用であった金融工学を、(当人すら気付かないうちに)過度に信頼するようになってしまったのではないだろうか。当ファンドはファンドマネージャーの勘で運用しています!というよりはよっぽど売り易いだろうし。すべてがそうでないにせよ、一部当てはまる部分はあると思う。タレブも本書の中で、「何がおかしいといって、ビジネスに携わる人たちは、私がそういう話をするとうなずいてくれるのだ。それなのに彼らは、翌日オフィスへ行くとガウス流の道具に戻ってしまう。」と言っている。そんな道具を使って顧客をだましている(当人にはそのつもりはないのかもしれない)のはまさに知的サギと呼ぶにふさわしい。しかし、そこにはなにかしら手がかりになる数字が欲しいという純粋な欲求があるだけで、なかなか責められるものではないのかもしれない。他にも、世の中のありとあらゆるものを、間違った枠でとらえている可能性は否定できないからだ(明日世界が終らないということがいえるか?もちろんほとんどありえないといえるが、絶対にありえない、とはいえない)。

経済学者(フリードマンやハイエクなどを除く)をこき下ろした本書が、書店の経済コーナーの一番目立つ位置にあるというのは・・・なんとなく皮肉を感じてしまったのは僕だけだろうか。上巻は懐疑主義など哲学的な著述が続いて興味のない人にはつらいかもしれないが、下巻へ続くタレブの主張が見えてくると非常に知的興奮に襲われる。最後の章の人生に関するタレブの思いまで是非読んで欲しい。おススメの一冊だ。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質 Book ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質

著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
販売元:ダイヤモンド社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

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民主党政権へ

民主党が第一党で大多数の議席を取った。

さて、ブログでは民主党の批判点を挙げてきた。はっきり言って不安な点はまだまだある。ただ、政権交代によるメリットや期待される点も池田氏のブログで指摘、議論され始めている。

マニフェストには綺麗事ばかりで、うんざりだが、小幡氏のブログ(8月26日付マニフェストとは政策ではない)になるほどという記述が。

民主党が本当に試されるのはこれからだ。マニフェスト通りのことを実行することはほぼ間違いなく不可能だ(財政が破たんするのが先だ)。問題はそれをいかに説明し、納得を得られるか、である。良いことばかりを政策として行うのではなく、対立している論点を調整し、全体としてより良い方向に向けるにはどうしたらよいのか、ミクロではなく、マクロの視点で考えてもらいたい。仮に失敗し、国民に不信感を持たれ始めた場合、民主党政権はあっけなく崩れ去るだろう。

(以下、メモ書き)

しかし、とある番組で民主党議員と自民党議員の議論を聞いていたが、やはり民主党の主張は劣勢の印象。なんとなく自民党議員は活き活きとしているように思えた。

アメリカと対等関係?どうやって?自国の軍事施設・軍事衛星・核ももたないで?。

内需主導、輸出からの転換?少子高齢化する世の中でどれだけ国内のパイが増えるのか・・・。子供手当では消費は増えない、貯蓄にまわるだけ。その原資は政府支出、つまりもともと自分のお金だ。将来の不安はむしろ高まるだろう。

無駄を削る?絶対的な無駄はない。相対的なムダを削る?では何をあきらめるのか?それを国民を覚悟しているのか。

野党となった自民党にとっても、これからが正念場だ。

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高速道路無料化について雑感

世間も盆休みに入り、帰省ラッシュが始まったようだ。

そんな最中に起こったのが、静岡地震であり、東名高速の一部が崩落した。現在も牧の原SA付近が通行止めとなっており、復旧活動が始まっている。しかし、小幡氏のブログでも指摘されているとおり、復旧を2日間で済ませる予定は無理があったのだろう。今のところ、15日中の開通が予定されている。これでも、あの崩落写真を見た感じからすると、たいしたものだと思う。

これに関連してというわけではないが、民主党の高速無料化について考えてみたい。

高速を頻繁に利用する人間である僕としては、景気対策として始まった高速料金一律千円は非常に嬉しい。実際に遠出も今までよりも気軽にするようになった。地方の景気対策として高速道路料金の値下げは効果があるといえるのではないだろうか。しかし、同時に高速の交通量が増え、渋滞にひっかかることが多くなり、予定通りに進めないことも多かった。実際GWに淡路島を通過したときなど、6時間超かかり道中疲れを通りこして笑ってしまった。

これがもし、高速無料化になってしまった場合どうなるだろうか。高速千円をはるかに超える渋滞が起こることは容易に想像できる。(環境面・公害の観点からしても交通量が増えるのは良いことではない。企業サイドにはかなり達成困難なCO2削減目標を掲げておいて・・・という感じもする)そして、一般道と高速道路の違いはなくなるだろう。運輸業界は高速道路料金として組み込まれていた物流コスト・運賃を更に削減するようにと運輸会社に迫る荷主が続出するようになるだろう。高速道路に多くの業務用車両や個人車が集中した時、果たして、どれくらいの混雑になるのか、予想もできない。運賃が下がった上、高速道路が渋滞し遅延した場合のことも考えると運輸業界もデメリットが発生する。あくまで可能性だが、それは長距離トラックドライバーにとっても疲労が今まで以上になることを意味する。

それでいて、高速道路の収入はなくなるわけであるから、その補充として税金が投入させられる。車を持っている人間は得をするが、車を持っておらずあまり遠出をしない人間は損をする仕組みなのだ。民主党は維持する財源は無駄な道路を作らないことで作ると言っているが、日本高速道路保有・債務返済機構の40兆円の債務は税金で、ということになる。

さらに、電車やフェリーなど公共交通機関はかなりの苦戦を強いられることになるだろう。収益が低下すると、サービスの質が向上するという意見もあるが、それも体力のあるうちだけで、結局経費削減を強いられ利便性は落ちるのではないか。利用者の選択肢が狭まるわけである。このあたりの議論については、αブロガーの紺ガエル氏が詳論している。

正直言って、突然の高速無料化で得られる便益とその効果を考えた際、疑問が生じるのだ。料金を下げ、経営努力によって、民営化会社によって現状のサービスを維持・向上しつつ、債務を返済していくのが妥当だと考えてしまう。

ま、当面はETCやSA・PAの収益力向上による料金の値下げ(日本の高速道路料金がバカ高なのは納得いかないので)が、交通量・渋滞との関連からしてちょうど良いというのが(ドライブ中毒者の)個人的見解である。時間がかかってもよいなら、下道を通ればよいわけであるし。

写真は先日東京から帰る最中の東名高速道路。

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民主党マニフェストについてあれこれ

民主党のマニフェストが発表された(正式なマニフェストではない、と騒がれているが)。

大方予測されていたとおりのもので、あまり新鮮さはない。やや現実路線に修正された点や中小企業対策が盛り込まれた点は評価したい。が、財源の根拠があいまいな点は相変わらずで、成長戦略も具体的でないのが残念だ。なにより、友愛という表現が胡散臭くてあまり好きになれない。

民主党が削減して得られる財源のうち、補助金や府庁費等(約55兆円)から6.1兆円分を節約するとしている。しかし補助金の中には社会保障関連の補助金や、地方への交付金、義務教育に関する予算が含まれている。現実的に削減が可能なのは、社会保障費を除く約6兆円の個別補助金と約8兆円の公共事業ぐらい(日経ビジネスより)なのである。約15兆円から6兆円節約することが、はたして出来るのであろうか。

加えて年金改革の財源も不透明。民主党の最低保障年金を行うためには新たな財源が必要となるが、これも明記無しで平成24年度から制度設計だそうだ。実行するには消費税の増税しかないと思うが・・・。

財源がないとなれば、新たに借金をするしかない。補正予算を含めた2009年度予算の一般歳出は102兆5000億円。予算ベースの税収は景気後退の影響で40兆円程度に落ち込むとされている。つまり、現段階で歳出の国債などによる借金でまかなう部分が60兆円にもなっているわけだ。これはどこかで修正していかなくてはならず、そのためには歳出削減と税収を増やす戦略が必要となる。問題なのは、自民党と同じく民主党には成長をもたらすための政策ではなく、ばらまき型の政策ばかりがならぶことだ(ばらまく先が中間ではなく、中抜きの直接型になっただけ)。「子供手当」「可処分所得を2割増やす」ことでは、消費にまわる分は少なく、貯蓄され景気を刺激する効果は少ないだろう。

子供手当については、若干評価が難しい。日本が今後経済的に伸び悩む最大の原因は少子高齢化であることは事実であり、対策すること自体には賛成だ。しかし、今の財政状況で、他のばらまき政策と合わせて行ってしまうと、その効果が現れるまでに日本が破たんしてしまうのではないか、という不安がよぎる。その不安こそが、少子高齢化の原因であり、将来の負担増は逆に少子化を悪化させるという識者もいる。僕としては、それよりは子供が少ないほうがその子供に十分な教育投資ができるという理由のほうが大きいと思うが、「子供手当」では効果があまりないという点には賛同できる。もちろんやらないほうがマシということではない。

「一時的に財政赤字が高まってもベビーブームが起きれば、財政は健全化できる」という楽観論も見受けられるが、疑問だ。まず、ベビーブームが起きる可能性が上記の理由により少ない。少子高齢化は一度その方向に進むと修正がきわめて難しいという(移民を受け入れるアメリカなどを除くと)。そしてもうひとつは財政の健全化までの時間的問題だ。というのも、少子化対策を行って仮に出生率が上昇したとしても、財政への貢献という意味では子供たちが成人するまで、今から20年~30年程度の間は効果がないからだ。現在の生産年齢人口に対する高齢人口の比率からすると、少子高齢化社会と今後半世紀は向き合わなければならない可能性が高い(多少出生率が増えたとしても緩和する程度の力しかない)。そういった意味で、今の負担のままで、成長戦略も描けないままでは財政赤字は膨らみ続け、少子化問題の解決の前に破綻ということになってしまうのではないだろうかという不安がよぎる。

これからは将来の世代のことも考えた成長戦略、財政削減がこれからは必要となるのであって、不必要なばらまき政策、保障は削減していかなければならず、厳しい時代となるのかもしれない。しかし、そうしなければよりひどい結末が待っている可能性も否定出来ないのだ。そういった長期的な視点を持ち、今が良ければそれでよいという既得権益をいかにして破壊するか、そこを次期政権には期待したい。

高速無料化について(ドライブ中毒者としても)思うところはあるが、少し毛色の違う話になるのでまた次の機会にでも。

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経済政策と政治

民主党「製造業派遣禁止」へ電機メーカー海外脱出は必至

民主「最低賃金千円」、マニフェストに明記へ

都議選は大方の予想通り、民主党の大勝となった。時事通信の調査による支持率も民主党が上回っているようである。

この調子でいくと、よほどのことがないかぎり衆議院選挙では民主党の大躍進、衆議院における第一党を奪取することが予想される。民主党には財源の不明確さなど、不安な部分が多々あるが上記の記事を見て、さらに不安になってしまった。

製造業派遣禁止がもたらすものについては記事に書かれているので省略する。最低賃金千円を”将来的に”目標とするというのは(百歩譲って)わかるとしても、今すぐに行うというのは無茶だろう。今この大不況のなか、どこの企業にも賃金を上げる余裕なんてあるはずもない。言ってることは綺麗で美しいが、強制的に行った場合結果として残るのは、労働者をより減少させることとなるだろう。そういう意味で現実離れしていると言わざるをえない。

このような、日本の産業を細らせるような政策を行い、結果としてより格差(あるいは全体の没落)を生じさせる政策を行おうとするのは、旧社会党議員や自治労、日教組を含む複雑な支持母体、連立をにらんで社民党を気にしなければならない民主党の内部事情が大きく関係している。社会保障を充実させる財源もなく、返すあてもない債務ばかりが膨らむ中で、さらに増税もせず社会保障を拡大させるとどうなるか。火を見るよりも明らかである[発散する財政赤字(池田伸夫ブログ)]とある金融ブログで「社会運動をしたりしている人も自分が何を言って何をしているのかよく分かっていなかったりします。例えば、左翼系の人が労働者の搾取や貧困を救うために声高に叫んでいる政策はどれも絶望的に貧富や身分を固定化するものばかりなのは時に滑稽だったりします。」との言葉があったが、あてはまる部分はあると思う。

民主党がとるべき政策ははっきりしているが、それを実行するのがいかに難しいかということについては、WSJに詳しい記事(これも池田ブログから)。政権交代自体は民主主義の観点からは望ましいのかもしれないが、もう少し民主党にはしっかりしてほしい。近く発表されるであろうマニフェストには注目したい。

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